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  • 1830年のフォルテピアノで聴く《リーダークライス》
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1830年のフォルテピアノで聴く《リーダークライス》

2025.04.12(土) 14:00 開演 〜16:00(終演予定)

カルラホール

この公演は終了しました

コンサート概要

ジャンル
: 声楽
プロ (クラシック)
本公演はシューマンの歌曲作品を1830年製のフォルテピアノと共に演奏するコンサート・シリーズです。10年をかけた大プロジェクトとなりますので、末永くお付き合いくださいませ。
 シューマンは歌曲作曲家として知られており、《詩人の恋》や《女の愛と生涯》、《ミルテの花》など多くの傑作を残しました。しかし、これらの名曲に隠れた知られざる歌曲作品が多いのもまた事実です。本公演では彼の代表作と併せて、このような未だ日の目を浴びていない歌曲作品にも焦点を当て演奏していきます。
 記念すべき第一回公演は、「2つのリーダークライス」と題して、《リーダークライス》作品24と39を演奏いたします。どちらの作品も「歌の年」と呼ばれる1840年に作曲されました。シューマンはそれまでピアノ曲を創作の中心としていましたが、クララの父ヴィークとの法廷闘争という大きな障害を乗り越え、クララとの結婚が見えてきたことを機に、表現の場を歌曲に求めました。幼い頃から詩に造詣の深かった彼の歌曲は、成熟したピアノの表現書法と詩の韻律を生かした美しい歌唱旋律が融合し、これまでに類を見ない作品へと発展しました。そして彼の最も革新的な点は、卓越した詩の選別、作品全体における調性の連続性・一貫性を用いることで、連作歌曲というジャンルを大きく発展させたことです。
 作品24はシューマンが出版した最初の連作歌曲です。ハインリヒ・ハイネ『歌の本』の「若き苦悩」の中の“歌曲”の9編の詩に曲が付けられ、詩のタイトルの通り、揺れ動く主人公の苦悩が描かれています。この後に誕生する彼の代表作《詩人の恋》と比較すると小規模ですが、それゆえ凝集力において優れており、ドイツロマン派を代表する歌曲作曲家の誕生を予期させる作品です。終曲におけるフィナーレ形成には彼の卓抜さが示されています。
 作品39はヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフの12の詩に基づいた歌曲集で、1840年に作曲、1842年に出版されました。1850年に大幅な改訂が行われ、現在ではこの改訂版が演奏されています。ドイツロマン派における最も重要なテーマ「自然」が描かれた詩に、シューマンは実験的な試みを行いました。中間の6曲目と7曲目を境に詩の内容と調性はシンメトリーに設定され、各6曲は後半に向かって高揚しています。12曲目は全体のコーダとして位置付けられ、愛の成就が歓喜に満ちて予感されます。
 2つのリーダークライスの間に演奏するのは、ブラームス《間奏曲》作品117です。ブラームスは、シューマンの死後、勢力的にシューマン歌曲の演奏活動を行い、《詩人の恋》や《リーダークライス》作品39もブラームスによって全曲初演されました。意外に思うかもしれませんが、シューベルトやシューマンの時代には連作歌曲の全曲演奏という習慣はなく、ブラームスが歌曲集の全曲演奏及びリーダーアーベントという概念を作ったのです。《間奏曲》作品117は、彼の晩年に作曲されました。シラーの詩に影響を受けており、非常に抒情的で詩的です。まさに2つのリーダークライスの「間奏曲」となってくれるでしょう。

本公演はシューマンの歌曲作品を1830年製のフォルテピアノと共に演奏するコンサート・シリーズです。10年をかけた大プロジェクトとなりますので、末永くお付き合いくださいませ。
 シューマンは歌曲作曲家として知られており、《詩人の恋》や《女の愛と生涯》、《ミルテの花》など多くの傑作を残しました。しかし、これらの名曲に隠れた知られざる歌曲作品が多いのもまた事実です。本公演では彼の代表作と併せて、このような未だ日の目を浴びていない歌曲作品にも焦点を当て演奏していきます。
 記念すべき第一回公演は、「2つのリーダークライス」と題して、《リーダークライス》作品24と39を演奏いたします。どちらの作品も「歌の年」と呼ばれる1840年に作曲されました。シューマンはそれまでピアノ曲を創作の中心としていましたが、クララの父ヴィークとの法廷闘争という大きな障害を乗り越え、クララとの結婚が見えてきたことを機に、表現の場を歌曲に求めました。幼い頃から詩に造詣の深かった彼の歌曲は、成熟したピアノの表現書法と詩の韻律を生かした美しい歌唱旋律が融合し、これまでに類を見ない作品へと発展しました。そして彼の最も革新的な点は、卓越した詩の選別、作品全体における調性の連続性・一貫性を用いることで、連作歌曲というジャンルを大きく発展させたことです。
 作品24はシューマンが出版した最初の連作歌曲です。ハインリヒ・ハイネ『歌の本』の「若き苦悩」の中の“歌曲”の9編の詩に曲が付けられ、詩のタイトルの通り、揺れ動く主人公の苦悩が描かれています。この後に誕生する彼の代表作《詩人の恋》と比較すると小規模ですが、それゆえ凝集力において優れており、ドイツロマン派を代表する歌曲作曲家の誕生を予期させる作品です。終曲におけるフィナーレ形成には彼の卓抜さが示されています。
 作品39はヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフの12の詩に基づいた歌曲集で、1840年に作曲、1842年に出版されました。1850年に大幅な改訂が行われ、現在ではこの改訂版が演奏されています。ドイツロマン派における最も重要なテーマ「自然」が描かれた詩に、シューマンは実験的な試みを行いました。中間の6曲目と7曲目を境に詩の内容と調性はシンメトリーに設定され、各6曲は後半に向かって高揚しています。12曲目は全体のコーダとして位置付けられ、愛の成就が歓喜に満ちて予感されます。
 2つのリーダークライスの間に演奏するのは、ブラームス《間奏曲》作品117です。ブラームスは、シューマンの死後、勢力的にシューマン歌曲の演奏活動を行い、《詩人の恋》や《リーダークライス》作品39もブラームスによって全曲初演されました。意外に思うかもしれませんが、シューベルトやシューマンの時代には連作歌曲の全曲演奏という習慣はなく、ブラームスが歌曲集の全曲演奏及びリーダーアーベントという概念を作ったのです。《間奏曲》作品117は、彼の晩年に作曲されました。シラーの詩に影響を受けており、非常に抒情的で詩的です。まさに2つのリーダークライスの「間奏曲」となってくれるでしょう。

▼大平倍大(テノール)
鹿児島市出身。東京藝術大学首席卒業、同大学院修士課程首席修了、同大学院博士後期課程修了。第64回瀧廉太郎記念全日本高等学校声楽コンクール第1位。第1回台東区長賞受賞。第42回鹿児島市春の新人賞受賞。2022年度、宗次德二奨学基金を受けウィーンへ留学。オペラでは藤沢市民オペラ『魔笛」をはじめ、「愛の妙薬」ネモリーノ、『ラ・ボエーム』ロドルフォ、[ゴイェスカス」フェルナンド(日本初演)等で出演。ベートーヴェン『第九』、シャルパンティエ「真夜中のミサ曲』、ロッシーニ『小荘厳ミサ曲」等のソリストを務めあるドイツ歌曲のコンサートも勢力的に開催。東京文化会館にて文化庁/日本演奏連盟主催リサイタル・シリーズ(TOKY0137)に出演。これまでに声楽を大友幸世、吉田浩之、I.ナチェフ、C.メリット、歌曲演奏を丸山滋、C.スペンサーの各氏に師事。

▼伊澤悠(フォルテピアノ)
第3回ハンス・フォン・ビューロー国際ピアノコンクール第3位など、国内外のコンクールで受賞。東京藝術大学在籍中アリアドネ・ムジカ賞、卒業時にアカンサス音楽賞、芸大クラヴィーア賞、同声会賞を受賞。これまでに、名古屋フィルハーモニー交響楽団、芸大フィルハーモニア管弦楽団、Meininger Hofkapelleと共演。伊藤恵、Markus Grohの各氏に師事し、Alfred Brendel氏より指導も受けている。現在べルリン芸術大学ピアノ科国家演奏家資格課程に在籍。また同大学フォルテピアノ科でLucas Blondeel氏の下で学び、2021年に最優秀の成績で卒業した。ドイツリートの演奏にも取り組み、2019年には第26回ブラームス国際コンクールにて最優秀歌曲伴奏賞を受賞。ドイツ各地で定期的にリサイタルを行うほか、演奏活動に加え、ドイツ・グラモフォン社で独日翻訳や日本向けマーケティングにも携わっている。

プログラム

R. シューマン R. Schumann
リーダークライス 作品24 Liederkreis op. 24
1. 毎朝起きては問うMorgens steh’ ich auf und Frage
2. 僕をせき立てるEs treibt mich hin
3. 木々をさまよったIch wandelte unter den Bäumen
4. 愛しい人よLieb’ Liebchen
5. 僕の苦悩の美しいゆりかごSchöne Wiege meiner Leiden
6. 待て、荒々しい船乗りよWarte, warte wilder Schiffmann
7. 山と城は見下ろすBerg’ und Burgen schau’n herunter
8. 最初から望みはなくAnfangs wollt’ ich fast verzagen
9. ミルテと薔薇でMit Myrthen und Rosen

J. ブラームス J. Brahms
間奏曲 作品117 Intermezzi op. 117

R. シューマン R. Schumann
リーダークライス 作品39 Liederkreis op. 39
1. 異郷でIn der Fremde
2. 間奏曲Intermezzo
3. 森の対話Waldesgespräch
4. 静けさDie Stille
5. 月の夜Mondnacht
6. 美しい異郷Schöne Fremde
7. 城塞でAuf einer Burg
8. 異郷でIn der Fremde
9. 哀愁Wehmut
10. 薄明Zwielicht
11. 森でIm Walde
12. 春の夜Frühlingsnacht

出演者

大平倍大(テノール)
伊澤悠(フォルテピアノ)

その他の情報

開場は13:30。1830年製のフォルテピアノをお聴きいただけるめったにないチャンスです。たくさんのご来場をお待ちしております!

動画